ユニフォームの静電防止!帯電防止作業服について解説
2024.02.27
目次
静電気は場所によっては、重大な問題を引き起こす原因になります。たとえば、電子機器や燃料を扱う工場です。
しかし、静電気はどのタイミングで発生するのか分かりません。そこで今回は、静電気が発生する原因を解説し、その対策である帯電防止作業服についても解説します。
現在、職場で静電気に悩まされている方はぜひご覧ください。
静電気について
寒い時期になると、身の回りでは頻繁に静電気が発生します。では、静電気はいかにして発生するのでしょうか。
ここでは、静電気について詳しく解説します。
発生する原理
静電気は2つの物体の接触によって発生します。たとえば、人間が歩行する際に起こる空気と皮膚、カバンと服のズレなどです。
物体を構成しているのは原子で、その原子が静電気の元になります。原子は原子核と電子からできており、原子核はプラス、電子はマイナスの電荷を持っています。つまり、人間を含む物体はプラスとマイナスの両方の電荷を有しているということです。
2つのものが擦り合わさる際、一方から一方へマイナスの電荷を持つ電子が移動します。つまり、現在2つの物体の一方はプラスの電荷を多く持っており、もう一方はマイナスの電荷を多く持っているという状態です。この状態を帯電と言います。
マイナス電荷はプラス電荷に向かって流れるのが一般的です。たとえば、プラス電荷が多い右手と、マイナス電荷が多い金属製のドアノブがあると仮定してください。電荷の性質上、ドアノブに右手を触れると、ドアノブのマイナス電荷が一気に手に流れ込んできます。一般的に静電気と言われる現象はこのことであり、痛みを感じるのもそのときです。
なお、静電気が痛いと感じるのは、放電のスピードが早いからです。電気が流れにくいものほど、放電のスピードは遅くなります。したがって、地面などの電気を通しにくいものに触れても、放電自体は起こりますが痛みは感じません。
発生する原因
静電気は以下の3つのパターンで発生します。
・接触
・摩擦
・剥離
1つ目は接触帯電です。2つのものが接触することで、マイナス電荷が片方に移動します。摩擦などのアクションをしなくても帯電状態になります。
2つ目は摩擦帯電です。2つのものが擦り合わさり、マイナス電荷が一方へ移ります。たとえば、髪の毛とプラスチックの下敷きを擦ったとき、服を脱ぐときなどに経験することが多いでしょう。
3つ目は剥離帯電です。元々接触していた2つの物体を離す際、片方にマイナス電荷が移動します。たとえば、剥がしたラップが手にまとわりつく、金箔が台紙から中々剥がれないなどです。
発生した際の影響
静電気の発生からは、以下のような影響が考えられます。
・痛みによるストレス
・電子機器の故障
・帯電した商品にほこりが付着する
・引火による火災
このように、静電気の影響は人体だけではなく身の回りの物にもおよびます。
とくに、電子部品や精密機器の影響は大きいです。静電気の影響がこれらに及んだ場合、故障や誤作動の恐れがあります。引火物が多ければ、静電気による火花で火災に発展するかもしれません。
そのため、電子機器を扱うような職場では静電防止が必須です。
静電・制電・帯電の違い
電気に関する単語で、静電、制電、帯電という3つの単語があります。似ている単語なので、これらを混同してしまう方もいるでしょう。
そこで、ここからは静電、制電、帯電について解説します。
静電とは
静電とは、静電気の略です。したがって、静電気と同じ意味、使い方になります。なお「静電」は、静電防止や静電対策という単語に使用されます。
制電とは
制電とは、放電を制御することです。静電気の原因の排除、物体が帯びている電気の排除などが当てはまります。静電気の発生によるトラブルを削減する場面では、制電加工は欠かせません。たとえば、以下のような加工です。
・生地に導電性の高い繊維を編み込んで、電気を溜めにくくする加工
・繊維に薬剤をコーティングして、空中に電気を逃す加工
市販の衣服にも制電加工は施されていますが、静電気が重大な事故につながる職場のユニフォームには、さらに高度な加工が施されています。
帯電とは
ものには電荷が存在しています。プラスとマイナスがあり、それぞれの電荷の量は同じです。
2つの絶縁体が接触や摩擦を行うと、マイナス電荷が片方に移動します。つまり、片方はプラスの電荷を、もう片方はマイナスの電荷を多く有しているということです。その状態を帯電と呼びます。
たとえば、プラスチックの棒を布でこすると風船を弾くようになります。このとき、プラスチックの棒は帯電しているというわけです。
JIS-T8118とは
JIS-T8118とは、静電気帯電防止作業服についての規格です。日本産業規格JISによって標準化されました。つまり、この規格に合格しないと、帯電防止作業服として販売できません。
この規格は、作業服に帯電した静電気によって引き起こされるトラブルを未然に防ぐためにあります。そのため、製造業の総務部などに所属している方は今一度、職場のユニフォームがJIS-T8118に合格済みかを確かめてください。
帯電防止作業服の規定
帯電防止作業服の規定には以下の3つがあります。
・導電性繊維が入った生地
・ファスナー・ボタンは表面に出さない
・裏地は表面積の20%以内
これらを満たしていないと、帯電防止作業服と認められません。そこでここからは、これらの規定について詳しく解説します。
導電性繊維が入った生地
規定によって定められた帯電電荷量を下回る生地だけが、帯電作業着に使用できます。そのため、帯電作業着に使用されている生地には、導電性繊維が編み込まれていることが多いです。
なお、繊維に導電性を付与する方法には、一般的に以下の2つが採用されます。
・繊維の表面に金属被膜を形成する方法
・繊維のなかに導電性の物質を混ぜる方法
繊維を加工するため、どちらも見た目に影響が出ます。そのため、一般的な衣服に採用する際は、装飾に使われることが多いです。
ファスナー・ボタンは表面に出さない
帯電防止作業服のファスナーやボタン、フックには金属製のものを使用してはいけません。そのため、樹脂製といった電気を通さない素材で作ったものを使用する必要があります。
とはいえ、場合によっては、どうしても金属製のものを使わなければいけないこともあるでしょう。その際は、金属部分が表に出ないように作業服を着用する必要があります。
このように、帯電防止作業服は服の構造だけでなく、着方にまで注意を払わなければいけません。
裏地は表面積の20%以内
裏地がない帯電作業服は、すべての生地を帯電防止素材にしなくてはいけません。しかし、作業服によってはやむを得ず補強のための裏地や、ポケット内部の生地を使うこともあります。
その場合は、通常の生地の面積が作業服の表面積、または露出する裏地の面積の20%を超えない範囲で使用しなければいけません。
帯電防止作業服を着用する理由
帯電防止作業服を着用する理由は、社員のストレスを削減するためです。静電気は作業による摩擦で溜まり、どのタイミングで放電するかわかりません。職業によっては、静電気が生じると作業に支障をきたすケースもあるでしょう。
そのなかで、社員は静電気に対して常に細心の注意を払わなければいけません。静電気に注意を払いながらの作業はストレスにつながります。そのストレスを削減するために、帯電防止作業服の着用が必要というわけです。
しかし、帯電防止作業服を着用する理由はほかにもあります。ここでは、さらに2つの理由について解説します。
火災や爆発を防ぐため
静電気は火花を生じさせます。したがって、近くに燃料類や火薬などの引火物があると危険です。小規模の発火であれば、消化作業で対応できますが、火災や爆発につながると社員の力では対応できません。
このような事故を未然に防ぐためにも、帯電防止作業服の着用は必要です。
機械や電子機器の故障を防ぐため
機械や電子機器は、意図していない電気が流れると故障してしまいます。これは、静電気のような微弱な電気でも同様です。
場合によっては、静電気が流れた時点で商品として販売できないものもあります。帯電防止作業服を着用すると、そのような損失を未然に防げます。
帯電防止作業服が必要な職種
帯電防止作業服が必要な職種は以下の4種です。
・電力会社や発電所
・電子工場や半導体製造工場
・化学工場や石油プラント
・印刷工場
では、それぞれどのような場面で必要になるのでしょうか。1つずつ解説します。
電力会社や発電所
電力会社や発電所では、帯電防止作業服の着用が必要になります。電気を扱う仕事なので、静電気による電流は不具合の原因です。繊細な電線や回路に少しでもイレギュラーな電気が流れると、多大な不具合が生じるかもしれません。
したがって、電力会社や発電所には帯電防止作業服の着用が必要になります。
電子工場や半導体製造工場
電子工場や半導体製造工場では、電子機器や半導体を扱います。
万が一、静電気を発生させてしまうと、電子機器がショートしたり、データが破損したりと膨大な損害を生みかねません。このことから、電子工場や半導体製造工場では、静電気の発生が商品に多大な影響をおよぼすリスクがあるので、社員は帯電防止作業服の着用が必須です。
化学工場や石油プラント
化学工場や石油プラントといった化学産業の職場でも、帯電防止作業着の着用は必須です。2017年には、化学工場で静電気による粉じん爆発が発生する事故が起きています。
可燃性の商品を扱う職場において、静電気の発生は商品を無駄にするだけでは済みません。静電気対策を試みて、事故を未然に防ぐのが重要です。
印刷工場
印刷工場では、1日に何枚もの用紙に印刷が行われます。その際、用紙は印刷機の中を通過しますが、そのときの摩擦が静電気の原因です。
帯電した用紙は人の腕や脚にまとわりつくため、作業の邪魔になるでしょう。多くの社員のストレスにならないように、帯電防止作業服を着て対策する必要があります。
ユニフォームは適切なサイズを選択することも大切です。こちらではユニフォームのサイズ選びについて紹介しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
今回は、帯電防止作業服について解説しました。
静電気は接触や摩擦、剥離によって発生します。そのため、体を動かしている限り静電気の発生は避けられません。万が一、商品に放電してしまうと故障や火災に発展します。そんな事故を未然に防ぐためにも、社員は帯電防止作業着の着用が必須です。
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